ヨウコさんがお金を払う間、コトダくんはじっとヨウコさんを見ていた。ヨウコさんがすわっていたときよりずっと小さく見えるのはなぜだろう、と考えていた
升中選校。
ちょっとこれを持ってて。
ヨウコさんが渡した「わたしを離さないで」の本を両手で受け取り、コトダくんはちょっと無理をして笑顔を見せた。本当になんだか嬉しかったけれど、コトダくんとしては笑顔を見せる種類の喜びではなかったから、その笑顔はヨウコさんへのサービスだった。2時間待たせたお詫びでもなければ、待たせたヨウコさんにお金を払わせているからというより、「わたしを離さないで」を読みながら帰らずに待っていてくれたヨウコさんへのコトダくんなりの感謝の気持ちだった
长江钢琴不合格。
最近読んで興味を持った本はある?
読んだって感じじゃないんですけどね、ナナフシの本を見て面白いなって思ったんです。
ナナフシってあのひょろっとした虫
威廉斯坦伯格钢琴?
そうなんです。
ナナフシってほんとに七つ節があるの?
いえ、ほんとは七つ節があるように見えるだけなんです。
七つあるわけじゃないの
威廉斯坦伯格钢琴?
いえ、たくさん節があるように見えるからナナフシなんです。七ってのはたくさんって意味もあるんですよ。ほら七転び八起きっていうでしょう。あれって本当に七回転ぶってわけじゃないんです。たくさん転んでその度に起き上がるってことなんです。
あら、そうなのね。知らなかったわ。
ヨウコさんは凜としたなかにも柔らかさを少し加えて答えた。コトダくんはこの凜とした感じが、ヨウコさんを実際よりずっと大きく見せたんだろうって納得しながら、ナナフシの説明をどこまで続けていいものかと考えた。